病気の説明

 

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おねしょ(夜尿症)

今日のお話は「おねしょ、夜尿症」についてです


みなさん、小さい頃におねしょをして怒られた記憶はありませんか?

また、おねしょをした子供を怒ってはいませんか?


それでは、何故おねしょをするのでしょうか?


おねしょは夜間に作られるおしっこの量と、膀胱に貯められるおしっこの量のバランスが悪いと起こります

大きく分けて3つのタイプに分かれます

ひとつめは夜間に作られるおしっこの量が多いタイプです

ふたつめは膀胱にためることができるおしっこの量が少ないタイプ

そして、みっつめはその両方が合わさったタイプです



脳の中には下垂体という小さな場所があり、そこからたくさんのホルモンが分泌されます

その中の一つに抗利尿ホルモンというホルモンがあり、これはおしっこを作るのを抑える働きがあります

人の体は成長の過程で睡眠のリズムが完成され、夜間はたくさんの抗利尿ホルモンが作られる様になるのです

大きくなって抗利尿ホルモンがしっかりと分泌されるようになると夜間のおしっこの量が減って、おねしょが無くなるのです


しかし、この抗利尿ホルモンの分泌がまだ少なければ夜間に作られるおしっこの量が多いためおねしょがおこりやすくなってしまいます


おねしょのタイプで夜間に作られるおしっこの量が多い人は、抗利尿ホルモンの分泌がまだ少ないと思ってください



次に、膀胱も成長の過程で機能が発達して、貯められるおしっこの量も多くなってきます

この膀胱がおしっこを貯められる量がまだ少なければ、夜間に作られるおしっこの量が少なくてもおねしょがおこってしまいます


さて、ここまで書いた所で考えてみましょう

おねしょは怒って治るものでしょうか?

違いますね

体が成長しないと治らないのです

体は怒っても成長しません




それでは、何歳まで様子をみれば良いのでしょうか?


おねしょの相談を受ける時に多い年齢としては9歳、10歳頃が多くなります

それは、4年生から学校の宿泊学習があるためです



おねしょ対策が必要な目安を書いてみますね


毎晩2回以上おねしょがある場合も小学校1年生までは様子をみて大丈夫です

朝方に1回のみで毎晩ならば小学校3年生までは生活の改善のみで大丈夫です

1週間で時々ならば、小学校4年生頃までは生活の改善のみで大丈夫です

それ以上ならば小児科を受診して原因を見つける様にしてみましょう





さて、ここからはおねしょ対策についてです

まず、抗利尿ホルモンが少ないタイプ、膀胱の機能がまだ未熟なタイプ、全てに必要なのは生活の改善です

1)怒らない!
さきほども言いましたが、おねしょは体の問題が大きいのです
それを怒ってはいけませんね
おねしょは、本人が一番気にしていて、傷ついている事が多いのです
お父さん、お母さんは守ってあげてくださいね


2)水分は少なめに!
これは、一日を通して少なくする必要はありません
ただ、夕方から寝るまでの水分量は少なくした方が良いです
もし、就寝が9時ならば、夕食は6時には取るようにしてください
夕食である程度の水分が入ってきます
その時に水分を多く取ったり、夕食の時間が遅くなっても睡眠中のおしっこの量がおおくなってしまいます
また、夕食は塩分も控えめにしましょう
そしてお風呂から上がった後も水分は最小限に、できたらコップ半分程度がベストですね
それから、牛乳の取り過ぎも良くはありません
カルシウムを取るためにと、毎日牛乳を500ml以上飲むのは、帰って乳脂肪分も多くなり、ホルモンの分泌も妨げられてしまいます



ここまでが、一般的な生活の改善となります




次に、自分の子供はどのタイプになるのでしょうか?

外来を受診していただき、相談を受けた時は、まずはしばらくおねしょ日記をつけてもらいます

おねしょ日記に記録するものは

1)夜間のおねしょの量(おむつの重さで測ります)
2)朝起きてすぐにトイレへ行って、その時に出たおしっこの量
3)夕食後の水分の量
4)がまん尿の量(日中におしっこをがまんして、どれだけおしっこを貯められるか見てみるのですが、小さい子は難しく、大きい子に時々つけてもらいます)

経過によってはおねしょをいつ頃していそうかもつけてもらいます

以上の記録を日記帳(専用のものがあり、お渡ししています)につけてもらい、その結果を元にどのタイプかを判断します

そして、最後に薬を使った治療についてお話をします

まず、おねしょに対して使われる治療方法ですが

1)三環系抗うつ薬:これはうつ病に対して使われるお薬ですが、抗利尿ホルモンの分泌を多くする作用があり、また、膀胱機能も改善する働きもあるため、夜間の尿量が多い場合、混合型の両方で使われます
うつ病では無い子供に使っても、少ない量を使うため心配はいりません
(以前は第一選択薬のように使用されましたが、現在は第一選択薬ではありません)


2)デスモプレシン:これは人工的に作られた抗利尿ホルモンです
点鼻薬や飲み薬があり、おしっこを作る量が少なくなります
ただ、水分を取る量をしっかりと少なくしないと体の水分が多くなりすぎてしまいます 


3)尿失禁治療薬:これは成人の尿失禁で使われるお薬ですが、膀胱の機能を改善してくれるため、膀胱の機能が未熟なタイプに効果があります


4)漢方薬:即効性は無く、程度が軽いタイプには効果があります
人によっては漢方薬が非常に効果が出る方もいます
 
5)アラーム療法:夜尿が出たらすぐにアラームが鳴り、本人が出たことを認識するようにしていきます。 その結果、睡眠中に膀胱が尿を貯められる量を増やし、夜尿が改善していきます。
 
現在は抗利尿ホルモン、及びアラーム療法が第一選択となっています。



生活の改善で効果が見られない時、おねしょ日記から抗利尿ホルモンの分泌や膀胱の機能に問題があると考えられるときはお薬を使っていきます

ただ、おねしょのコントロールをする時は夏に行う事をお勧めします

それは、夏は体が脱水傾向になることが多く、コントロールしやすい事、そして、冬場は寒いとおしっこが近くなってしまうためです

したがって、夏場でも手足が冷たくなってしまう程エアコンをつけてしまっては駄目なのです

夏場にコントロールが良くなっても、冬になると逆戻りすることがありますが、夏にコントロールできた子供は、冬に逆戻りしてもすぐに落ち着いてきます

夏にコントロールできたら後少しです




おねしょって、本人も、お父さん、お母さんも誰にも相談できないでいることが多いんです

恥ずかしがらないで下さい

ねしょは体の問題がほとんどなんです


学校の宿泊学習も安心して参加できます

もし、宿泊学習の頃におねしょのコントロールができていなくても、対策方法はあります

多くの学校では、予め先生に伝えておけば、その時だけは夜間に一度おこしてもらっておしっこに行くようにしましょう

そして、それまでに一番効いたお薬を持っていくと良いです

おねしょパンツと外見からはわからない下着もあります


家族だけで悩んでいないで、是非相談してください

(本人が受診を嫌がる時は、検査等が必要になるまではお父さんやお母さんだけでも大丈夫です)